「もっさり感」を表すINPと14サイトに共通する売上との関係

自社のサイトを動作確認していて、「なんだかもっさりしているな」と感じたことはないでしょうか。ページの表示は別に遅くないのに、操作をし続けているとなんだか反応が鈍いように感じる。言葉にしにくいこのもっさり感は、確かな直感です。実は売上にも大きな影響を与えています。
Core Web Vitalsの INP(Interaction to Next Paint) は、まさにこのもっさり感を数値として捉える指標です。
もっさり感の正体──LCPとINPの違い
Core Web Vitalsの中で最も知られているのは LCP(Largest Contentful Paint) でしょう。ページを開いたとき、メインのコンテンツが表示されるまでの時間を示す指標です。一方、INPは少し地味な存在で、正確に説明できる方は案外少ないかもしれません。
INPが測っているのは、ユーザーが何かを操作してから、その結果が画面に描画されるまでのタイムラグです。ボタンを押した、メニューを開いた、フォームに入力した──そうした操作に対して、画面がフィードバックを返すまでの時間。この応答が遅いほど、INPの値は大きくなります。
LCPとINPの違いは、こう整理するとわかりやすくなります。
- LCPが悪い → ページを開いたときに遅くてがっかりする
- INPが悪い → ページを触ったときに遅くてがっかりする
LCPが「開いたときのがっかり感」なら、INPは「触ったときのがっかり感」。あの言葉にしにくいもっさり感の正体は、INPだったのです。
人間は0.1秒の遅れを感じ取る
このもっさり感は、決して気のせいではありません。UXの権威ヤコブ・ニールセンは1993年の著書『Usability Engineering』の中で、人間がシステムの応答を「即座に反応した」と感じられる限界は 0.1秒(100ミリ秒) であると示しました。たった0.1秒を超えるだけで、人は「自分が操作した」のではなく「コンピュータの処理を待っている」という感覚に変わるのです。
しかし、この研究から30年以上が経ちました。スマートフォンやタッチデバイスが当たり前になった現代、ユーザーの感覚はさらにシビアになっています。実際のデータがそれを裏付けています。
50ミリ秒を超えると離脱の方が多くなる
弊社にご協力いただいた通販14サイトの実データでINPとコンバージョンレート(CVR)の関係を検証しました。以下のグラフは、INPの値に対してCVRがどのように変化するかをサイトごとに示したものです。どのサイトでも共通して、CVRが高いのはINPが非常に小さい間だけで、少しでも悪化するとCVRが急激に低下しています。

この14サイトのグラフを一つに重ね合わせたのが以下です。各サイトの全体CVRを1.0(CVR比率1.0)として正規化しています。CVR比率が1.0を下回るということは、そのサイトの全体平均よりもCVRが低いことを意味します。

注目すべきは、INPがわずか50ミリ秒(0.05秒)を超えた時点で、すべてのサイトでCVRが全体平均を下回り始める ということ。これは一部のサイトの話ではなく、14サイトに共通して見られる傾向です。
ニールセンが100ミリ秒を提唱したのは30年以上前のことです。当時は0.1秒が「即座」の限界でしたが、ITの進化とともにユーザーが操作への反応を待てる時間はどんどん短くなっている。現代のユーザーにとっては、0.05秒がその分岐点になっているのかもしれません。
裏を返せば、コンバージョンは「操作が遅くない少数のユーザー」によって支えられている ということです。大多数のユーザーは、言葉にできないもっさり感によって購買意欲を静かに削がれている可能性があります。
INPを10%改善するとCVRは3〜6%上がる
このようなINPとCVRの関係を数理モデル化し、INPの改善によってどれだけ収益に影響を与えるかをシミュレーションしたのが以下です。

結果は明快で、INPを10%改善するとCVRは約3〜6%改善するという予測が得られました。ユーザーがサイトを触ってくれたということは、少なくともそのサイトに興味を持ってくれたということです。INPが遅いということは、せっかく興味を持ってくれたユーザーの期待を裏切っているとも言えるのです。
なぜINPが遅くなるのか
では、INPを悪化させている原因は何でしょうか。大きく2つあります。
ひとつは、フロントエンド実装の質の問題です。 ユーザーが画面を操作すると、裏側ではJavaScriptというプログラムが動いて画面を更新します。この処理が重たいと、操作してから画面が反応するまでに時間がかかります。特に、画面側のパフォーマンスに精通していないエンジニアが複雑な画面機能を力技で実装すると、たしかに動くけれど非常に重い処理になってしまうケースが多く見られます。
もうひとつは、計測タグの積み重ねです。 アクセス解析や広告効果測定のために、多くのサードパーティタグを導入しているサイトは少なくありません。これらのタグは画面には何も表示しませんが、ユーザーの操作を裏側で監視し続けるJavaScriptです。タグが増えるほど、操作のたびに走る処理が重くなり、INPを押し上げます。つまり計測とINPはトレードオフの関係にあるのですが、そのことに気づかず解析タグを乱用し、ユーザー体験を損ねているサイトも珍しくありません。
あなたのサイトは「触って速い」ですか?
INPは、SEOの文脈でCore Web Vitalsの一指標として目にすることがあっても、その意味まで踏み込んで理解している方はまだ多くありません。しかし、ここまで見てきたように、操作のもっさり感は確実にユーザーのストレスとなり、売上に影響しています。
ページの表示速度だけに気を取られ、「触ったときの速さ」を見落としていないか──一度立ち止まって確認してみる価値はあるはずです。
今回掲載したグラフはすべて、弊社の「Speed is Money」によって計測したデータに基づくものです。INPを含むCore Web Vitalsが実際に売上にどう影響しているかを調べるなら、最初の一歩に最適なツールです。計測タグを設置するだけで、INPとコンバージョンの関係を実データで可視化できます。
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