PageSpeed Insightsのスコアを目標にしてはいけない理由

「PageSpeed Insightsのスコアを80点以上にしたい」「競合より高いスコアを目指したい」──サイトスピード改善に取り組む際、このような目標を立てていませんか?
実は、この目標設定の仕方には大きな落とし穴があります。多くの企業が陥りやすいこの罠について、なぜ問題なのか、そしてどうすればより現実的な目標を立てられるのかをお伝えします。
PageSpeed Insightsの計測基準は日本向きではない
PageSpeed Insightsでスコアを測定したら、予想以上に低い数値が出て落ち込んだことはないでしょうか。
実は、スコアが低く出てしまう理由の一つは、計測基準がグローバル仕様だからです。
このツールは、世界中のさまざまな通信環境を想定して設計されています。具体的には、通信速度が遅い新興国の回線や、性能が低い安価なスマートフォンを基準にシミュレーションを行います。
日本のように高速なモバイル回線が普及し、比較的高性能な端末が使われている環境とは、前提条件が大きく異なるのです。
その結果、日本のユーザーにとっては十分に快適なサイトでも、PageSpeed Insightsでは厳しい評価が下されることになります。この乖離を理解せずにスコアだけを追いかけると、最初から途方もない目標を立ててしまう危うさがあります。
スコアという数値の罠
もう一つの問題は、スコアは一見分かりやすい数値に見えて、実は直感的な指標ではないことです。
PageSpeed Insightsが表示するスコアは0〜100の数値で、一見するととても分かりやすい指標に思えます。だからこそ飛びついてしまいがちですが、このスコアの成り立ちは実は複雑です。
スコアは複数の指標(LCP、INP、CLSなど)を独自の重み付けで計算した結果であり、何をすればスコアが上がるのか、直感的には分かりにくい構造になっています。
たとえば、10点を20点に上げるのと、80点を90点に上げるのでは、同じ10点の改善でも本質的に求められる対策はまったく異なります。「スコアを10点上げたい」と目標を立てても、具体的に何をすればよいのかが見えにくいのです。
高スコアは商用サイトには非現実的
PageSpeed Insightsで高いスコアを出せるサイトには、ある共通点があります。
それは、非常にシンプルな構成であること。データ量が少なく、外部サービスの読み込みも最小限。計測タグやマーケティングツールもほとんど入っていない──そんなサイトです。
言い換えれば、ビジネス要件をほぼ持たない個人ブログのようなサイトでなければ、高スコアを達成するのは困難です。
商用サイトには、アクセス解析、広告タグ、チャットボット、レコメンドエンジンなど、ビジネスに必要なさまざまな要素が載っています。これらを背負いながらPageSpeed Insightsで高スコアを目指すのは、年齢を重ねた体で若い人の記録と無理に張り合うようなもの。すでに背負っているものがあるのに、それがない相手と同じ土俵で競おうとしても、フェアな勝負にはなりません。
競合比較もページ単位では不正確
「競合サイトよりも高いスコアを目指す」という目標設定も、実はあまり有効ではありません。
PageSpeed Insightsはあくまでページ単位の計測ツールです。サイト全体のパフォーマンスを測定することはできません。
自社のトップページと競合のトップページを比較することはできますが、サイト全体を通じてユーザーがどのような体験をしているかは分かりません。特定のページだけを比較しても、それがサイト全体の優劣を示すとは限らないのです。
また、どのページをいつ比較するかによっても結果が変わるため、フェアで公正な比較がしにくいという問題もあります。
Chrome User Experience Reportで競合との実力差を知る
では、どのように目標を立てればよいのでしょうか。
お勧めしたいのは、Chrome User Experience Report(CrUX) を活用する方法です。これはGoogleがChromeブラウザを通じて収集している、実際のユーザー体験データです。
CrUXデータの優れた点は、サイト全体のパフォーマンスを、実際のユーザーの体験に基づいて評価できること。一瞬のシミュレーションでも架空のユーザーでもなく、本当にそのサイトを訪れた多くのユーザーの総合的な体感速度が数値化されています。
このデータを使えば、自社サイトと競合サイトの「本当の実力差」が見えてきます。
具体的な目標設定としては、まず自社より少しだけ速い競合サイトをターゲットにします。そのサイトを追い抜くことを最初の目標にし、達成したら次のターゲットへ。こうしたスモールステップを積み重ねることで、着実にパフォーマンスを向上させていけます。
PageSpeed Insightsは小さな進捗確認に活用する
PageSpeed Insightsが使えないわけではありません。目標設定には向いていませんが、改善の進捗を確認するツールとしては非常に有用です。
CrUXデータで競合ターゲットを決めた後、「以前の自分のサイトと比べてどう変わったか」を確認するためにPageSpeed Insightsを使う。これが正しい使い方です。
また、スコアという便宜的な数値ではなく、LCP、CLS、INPといった具体的な指標の実際の値を追いかけることも重要です。スコアに一喜一憂するのではなく、個々の指標がどう変化したかを見ることで、改善の方向性が明確になります。
月単位のCrUXデータで大きな方向性を確認しながら、日々の改善作業ではPageSpeed Insightsで細かな変化を追いかける。 この組み合わせが、現実的で効果的なサイトスピード改善の進め方です。
目標設定と測定ツールを使い分けることで、途方もない目標に挫折することなく、着実な改善を続けていけます。
Chrome User Experience Report(CrUX)データを手軽に閲覧できるツールとして、弊社が提供する「サイトスピード クロニクル」をお勧めします。URLを入力するだけで、競合サイトとの比較や5年間の推移を無料で確認できます。
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CrUXデータを活用した無料のCore Web Vitals比較ツール。競合との実力差を把握し、現実的な目標設定ができます。